回転しやすいか、しにくいかの物理特性を慣性モーメントということを前回お話ししましたが、ここで慣性モーメントそのものがどうボールに現されているかをさらに追求してみましょう。
転がりやすいボールを低慣性、転がりにくいボールが高慣性という概念は解ったものの、どうやったらそれらのボールを見いだすことができるか、という指標がなければ実際にはどのボールが低慣性なのか高慣性なのかを判断することができません。その指標になるのが「RG」とう値なのです。最近のボールのスペックには「RG」という値が表記されていますが、この「RG」というのはRadius of Gyrationの略で、回転半径と訳される物理概念で、このときの慣性モーメントは、
(慣性モーメント)=(質量)×(軸からの距離)
であらわされますから、重さや軸からの距離によって慣性モーメントは変化します。

ボールの質量を1点に凝縮して、軸の周りを回転しているところを想像してください。ひもにつり下げた重りを振り回しているようなイメージです。このときの慣性モーメントは上の式で現されます。これは対象物が非常に小さく大きさが無視できる場合の話で、ボールのようにある程度大きいものはその各部で軸からの距離が違ってきますのでこのままでは計算ができません。そこでボールを無数の小片に分割してここの小片についての慣性モーメントを計算し、それらを全て足し合わせたものがボール全体の慣性モーメントになるのです。そしてボール全体の慣性モーメントに等しくなったときの軸からの距離が回転半径(RG)ということになるのです。
ではなぜ慣性モーメントそのものではなく、RGを表記するのでしょう。その理由の一つは単位が「長さ」の次元になるため大きさをイメージしやすいということにあります。0.03kg・m2 よりも2.5インチの方がずっとわかりやすいからです。
| ボール |
重量 |
慣性モーメント |
R G |
| (ポンド) |
(Kg・u) |
(インチ) |
| A |
16 |
0.0292 |
2.50 |
| B |
14 |
0.0277 |
2.60 |
(岸本孝博氏計算による)
もう一つの理由はRGの算出過程で重さによってRGが異なるために単純に重さによる比較ができる点にあります。実例をあげてみましょう。
重さの違う2個のボールのうち、材質や表面粒子など、他の条件を同じにした時のスキッドの長さを比較してみましょう。
表にある2個のボールのうち慣性モーメントが大きいのは16ポンドですからAの方がスキッドは長くなると思いがちですが、重いAの方にはそれだけレーンからの摩擦が大きく作用するためにスキッドはRGの大きいBになります。
RGはABC(アメリカボウリング協会)によって製造上の規定があり、2.430〜2.800インチ以内と定められていますが、実際に市販されているボールは低慣性側に偏っていて、2.641インチを超えたものは高慣性という位置づけになっています。
表は米国BTM誌で区分しているRGの数値を参考に、私が表にしたものです。
自分のボールのRGは果たしてどの位なのか、知っておくことも必要だと思います。
| 低慣性 |
低−1
低−2
低−3 |
2.430〜2.465
2.466〜2.500
2.501〜2.535 |
| 中慣性 |
中−1
中−2
中−3 |
2.536〜2.570
2.571〜2.605
2.606〜2.640 |
| 高慣性 |
高−1
高−2
高−3
高−4 |
2.641〜2.675
2.676〜2.710
2.711〜2.745
2.746〜2.800 |
次回はフレアポテンシャルと凾qGの関係について述べる予定です。
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